学 園 校 舎 の 耐 震 対 策 に つ い て

平成10年5月(H13.6更新)

 A. 神奈川県における地震について

B. 学園校舎の耐震診断について

          C. 貴校の建物のうち耐震診断をされるべき校舎(略)

D.  耐震診断料について    

E.  補助金について      

    F. 当社の耐震診断および耐震補強の実績

G. 参考資料および用語の説明 

学 園 校 舎 の 耐 震 対 策 に つ い て


A. 神奈川県における地震について
□はじめに

先頃の阪神・淡路大地震では、近年にない大きな被害をもたらし、震後も様々な社会的問題を引き起こしています。 関東・東海地方、特に神奈川県の立地は、ご存じのように、日本における地震をおこす4つプレートが全て集中的にせめぎあっている、世界でも希な場所といえ、過去より幾多の地震災害にあい、無関心ではいられないところです。また、政府の中央防災会議や地震予知連絡会でもマグニチュード8クラスの南関東大地震、東海地震に特に注目しています。また、それ以外にも政府機関に認知されていないが、多くの地震学者が、マグニチュード7クラスの首都圏直下型地震と神奈川県西部地震発生の切迫性に警告を発しています。

□地震の発生メカニズム

 地震は大地の変形によってひきおこされます。大地の変形は何故起きるかと言いますと、それは、現在、プレートテクトニクス理論によって説明されています。地球の内部構造は、内核、外核、マントル、地殻からなりたっています。今世紀始めにドイツのアルフレッド・ウェゲナーによって『大陸移動説』がとなえられ、更にイギリスのホルムズによって、その移動は、マントルの対流によるものと説明されました。その後、アメリカのディーツとヘスによって、『海洋底拡大説』が唱えられ、より詳細な説明がなされました。プレートテクトニクスはその2つの説が結びつけられ、現在の理論となっています。地震は、その隣り合うプレート同士の、互いに離れいく、近づきあう、すれ違う、の運動によって生じます。太平洋岸で起きる巨大地震は、主に太平洋プレートが大陸プレートの下に潜り込むことによって生じる歪みのはねかえりのエネルギーが地震となります。



□神奈川県下における地震とその予測について

(1)東海地震--過去の歴史的観点、観測技術、体制整備の発達から、東海沖の駿河トラフ沿いに、近い時期にマグニチュード8クラスの大規模地震が発生することが予想されています。地震発生の周期は、約100〜150年と考えられていますが、すでに1854年の安政東海地震より130年余り経過しています。(図中のD又はE領域)

(2)神奈川県西部地震--この地震については、ここ 10数年の間に調査研究が進み、学識者の中でも最近とみに関心がもたれ、地震発生の危惧を指摘する意見が増えています。故河角広博士の関東南部地震69年説が提唱されたが、最近、石橋克彦氏により小田原周辺を震源とする70年周期の地震が指摘されています。この地域は顕著な断層はみられませんが、石橋モデルでは、西相模断裂と呼ぶフィリピン海プレートの裂け目が引き起こすとし、更にこの地震は、東海地震、それに続く相模トラフ沿いの大地震の引き金になるとしています。神奈川県では、この地震は、マグニチュード7クラスの内陸直下型と考え、1998年±3年位が要注意としています。(図中のR領域)

(3)相模トラフ沿いの大地震--過去に元禄地震、関東大地震などマグニチュード8クラスの巨大地震が、発生しています。この発生原因は、相模トラフ沿いのフィリピン海プレートの潜り込みによりプレート境界面が破壊され、巨大地震が起こるものです。1988年の中央防災会議地震防災対策強化地域指定専門委員会の中間報告では、「地震の切迫性については相模湾周辺の測地結果からみても歪みの蓄積は進行しておらず、発生の可能性は切迫していない。」としています。(図中のS領域)

(4)南関東地域直下の地震--前記の中間報告では「この地域は、大陸プレート、フィリピン海プレート、太平洋プレートが接していることなどを考え合わせると、ある程度の切迫性を有していると考えられる」と報告しています。また、1992年の報告では、相模トラフ沿いの大地震が発生するまでの間にマグニチュード7クラスの地震が数回発生するであろうと、述べられています。(図中のK領域)

(5)房総半島沖の地震--前記の中間報告では「房総半島の東方から南東にかけて、かなり沖合いに発生するマグニチュード8クラスのもので、観測資料が不足であるが、その発生の可能性については考慮しておく必要がある。」と述べられています(図中のT領域の東南東)。これについては、前記4項目の地震と比べますと、発生の予測根拠としては、現段階では説得的ではありませんが、注意は必要かと考えます。


   

(6)考 察-- 上記(1)〜(5)までの神奈川県下に強い影響を及ぼすと思われる、地震について述べましたが、これも未解明な部分が多い現在の地震学での予測ですので、確かなことは、何一つ言えるものではありませんが、前記のように政府の中央防災会議では、広域ということもあり、(1)、(2)、(4)について問題にしておりますが、神奈川県では、(1)、(2)、(3)を主眼にしているようです。特に、(2)の神奈川県西部地震(いわゆる小田原地震)については、学会でも異論もあり、防災会議の報告でも正面から取り上げらていませんが、小田原付近の直下型ということもあり、神奈川県では、積極的に取り上げ、被害想定調査のシミュレーションまで行っております。また、小田原地震がおこると、東海大地震、相模トラフ大地震へと続く可能性もあるとする学説も最近いわれておりますので、注意すべきところでありましょう。

     以上の図、表は、石橋克彦著 岩波書店「大地動乱の時代」より借用させていただきました。


B. 学園校舎の耐震診断について

□はじめに
  神奈川県より、県有重要建築物に対する耐震診断基準が定められています。神奈川県は、この分野に関しては最も先進的な県といえます。また、当事務所の岡田常務は、この基準案作成に委員として参画致しております。貴校も、この基準に基づき診断されるよう、お薦め致します。

□地震の大きさ、強さ
  一般に、地震の大きさを表わす言葉に『マグニチュード』がありますが、これは地震の「規模総量」を意味しますので、個々の建築的耐震を考える場合は、基準単位にはなり得ません。一方、気象庁の発表の震度3とか5とかは、「地震のゆれの強さ」を地域ごとに8段階に区分したもので、個々の耐震を考える場合の大まかな目安にはなりますが、比較的強い地震の区分単位にはなり得ません。
  建築学的な耐震の基準となる地震の強さの単位は、重力加速度の『ガル』を使います。耐震解析では、ある場所での地震動の最大加速度を基準に致します。例えば、総重量1000Lの物体に200ガルの地震動加わったとしますと、1000×200÷980=200というように約200Lが加わった事になります。その力によって、その物体が、どう変形し、どの程度破壊されるのかを解明するのが診断です。

神奈川県で示されている貴校の地域の予想再現加速度は(下図参照)
@東海地震では−−−−→____gal(ガル)
A南関東地震では−−−→____gal(ガル)
      (いわゆる相模トラフ沿いの関東大震災を引き起こした地震)
B神奈川県西部地震−−→____gal(ガル)
 となり、これらの内一番大きい数値を原単位に耐震診断を行うことになります。

《東海地震予想加速度》

 《南関東地震予想加速度》


    診断の手順は神奈川方式によりますと、

       予備診断 −−→ OK ┐
         |         │
         | NO      ├ 神奈川方式
         ↓         │
      一次二次診断−−→ OK │
         |         ┘
         | NO      ┐
         ↓         │
       三次診断 −−→ OK ├ 国の方式
         |         │
         | NO      ┘
           ↓         ┐
       耐震補強等の処置    ├ 神奈川方式
                   ┘

 以上のプロセスになります。神奈川方式の予備診断、一次診断で合格であれば、まず安心といえますが、そこで合格するのは、かなり壁量の多い建物といえます。

□予備診断について

 建物の壁量(Lw)の計算をし、所定の数値以上であるか判定します。 以下であれば、次に耐震指標Isと耐震判定指標Isoを算定し、Is≧Isoとなれば合格で、Is<Isoであれば不合格となり、更に、一次診断に進む事になります。2次3次の解析をしても問題のある場合は、耐震補強等の処置が必要になります。耐震補強についても神奈川県で定めた基準方法があります。
 予備診断は、比較的簡単に解析出来ますので、貴校においては、まず、1981年(昭和56年)以前に建てられた校舎を早期に予備診断されるべきでありましょう。特に1971年(昭和46年)以前の建物については、最優先にされるようお願いいたします。 

□1次診断について

 柱と壁の強度に着目し、弾性範囲内で構造体の保有する性能と、地震応答の考えを取り入れた評価とを略算的に判定するものです。壁の多い建物に適しており、壁の少ないものには過小評価になります。 

□2次診断について

 柱と壁の個々の部材の終局強度とその破壊形式を考慮し、地震応答の考えを取り入れた評価と比較して判定するもので、塑性変形による部材の粘りの評価がわかります。(神奈川方式では2次診断まで)

□3次診断について

 柱、壁、梁の終局強度から建物全体の破壊時の強度を求め、必要耐力指標と比較して安全性を検討するもので、個々の部材が終局強度に達した場合でも、その建物が崩壊するかしないかを判定します。

 2次3次では鉄筋コンクリートの部材断面だけでなく、鉄筋の径、本数まで計算の対象になり、診断の作業量が格段に増大します。


□家具、備品、窓ガラス等の2次構造材の耐震対策

 建物の躯体をベースとなる1次材と考えますと、家具、備品、窓ガラス等の2次構造材の耐震対策も重要です。忘れがちですが、これがおろそかですと、初期の避難の支障になったり、震後の活動にも悪影響を及ぼします。

(1)家具備品に関して--全ての家具を固定することは困難ですので、下記に転倒の判定式を示しましたので、目安にして戴きたいと思ます。

 

転倒する加速度=(D/H)×980

重心の高さHが不明の時は物体の高さとします。上記の式からは、H寸法は、大まかに1〜2階位ではDの2倍までならOKです。4、5階はH≦Dとなります。HがDより大きくなるときは、固定すべきです。固定方法はL型金具やビスで丈夫な壁体に留める位で十分です。 

(2)窓ガラスの安全--引違いサッシ等の動く建具のガラスは、比較的破損しません。2階以上でしかも固定された建具のガラスは、特別の配慮(ガラスのクリアランス設計)がされていなければ、強化ガラス(学校向けの比較的安いものがあります)や網入りガラスに取り替えられるべきでしょう。

□防災備蓄について

大地震後の対策として、防災備品の確保も重要です。防災備蓄庫について当事務所は、数年前に、横浜市と共同で設計規準を作成した経緯もありますので、貴校に対して総合的防災対策のお役に立てると思っております。

また、飲料水の確保も重要です。中水道の設備や必要に応じて井戸の掘削のために、電波探査等の事前調査もお薦めします。


D.耐震診断の設計料について

  神奈川県で示された基準単価を元に、当社では下記の設計料をご呈示します。

  但し、この見積条件は   @学校建築であること
               A数棟同時の診断であること
               B必要な構造図があること
               C土質調査資料(ボーリングデータ等)があること
               D1棟ごとのコストであること

   が、満足されるものとします。特にBの必要な構造図がありませんと、診断のためには、鉄筋を含めて構造図を復元いたしますので、相当高額の
  費用がかかります。

 ^予備診断、1次診断、2次診断まで
       a)構造計算書がある場合     基準価格×1.00
       b)構造計算書がない場合     基準価格×1.25
       c)特殊構造の場合        上記にプラス0.25
       ※予備診断、1次診断で終わる場合は、その都度清算いたします。

 _3次診断まで
       a)構造計算書がある場合     基準価格×1.30
       b)構造計算書がない場合     基準価格×1.80
                (特殊構造の場合も含む)
       ※予備診断、1次診断で終わる場合は、その都度清算いたします。

 `基準価格
       基準価格につきましては、別途おたずね下さい。

 a躯体調査費 (コアー抜取検査、鉄筋探査、ひび割れ探査)
          耐震診断とは別の費用となり、1棟当たり、約100万円〜200万円位
         の目安です。補強工事で国庫の補助金を受ける場合は、躯体調査が必須
         になります。


E. 補助金について

1)耐震診断経費への補助金

     私立学校への耐震診断への補助金は神奈川県と国があります。
    それぞれ異なる補助形態です。

 ロ県の耐震診断補助金

     神奈川県は、私立学校に通う児童生徒の安全の確保と、災害の際の避難施設
    としての観点から、耐震診断調査費の一部を補助することによって、私立学校
    施設に係わる耐震診断調査を促進することを目的とした上記補助金制度を発足
    させています。

    内容は以下の通りです。

  ・対象校種:小・中・高等学校、盲・養護学校、幼稚園

  ・補助限度額:高等学校170万円、小・中・盲・養護学校90万円、幼稚園35万円

         校種が2以上の場合は、若干の加算があります。

  ・補助率:耐震診断経費の1/3以内

  ・対象施設:原則として昭和56年5月以前に着工した建築物。

 ワ国の耐震診断補助金

    神奈川県と異なり、耐震診断を行い耐震補強をした経費に対してのみ、
   耐震診断及び耐震補強経費への補助が行われます。

   その内容は以下の通りです。(詳細は参考資料参照)

  ・対象校種:小・中・高等学校、盲・養護学校、幼稚園

  ・補助限度額:1学校当たり400万円以上2億円以下

  ・補助対象経費:耐震補強工事費、実施設計費(工事費の1%限度)、耐震診断経費

  ・補助率:補助対象経費の1/3以内

  ・耐震補強における国庫補助金申請のフロー

 


F. 当社の耐震診断および耐震補強の実績

 耐震診断実績

実施年月

件 名

委託先

備 考

昭和59年

鶴ヶ峰浄水場、戸塚共立第二病院他4件

神奈川建築士会

 

昭和62年

大和市庁舎、平塚養護学校

同上

 

平成元年

防災行政無線西谷鉄塔装置増設に伴う検討

横浜市

 

平成3年

県立湘南高校理科棟、特別棟・
県立小田原城東高校

神奈川建築士会

 

平成4年

鎌倉市立山崎小学校

鎌倉市

 

平成8年

鎌倉学園 東、西、中棟

鎌倉学園

 

平成9年

相洋中・高等学校 3、4、5号館

明徳学園

                      

平成11年 

相洋中・高等学校8号館

明徳学園

 

  

  

  

  

 耐震補強実績

実施年月

件 名

委託先

備 考

平成5〜9年

鎌倉市山崎小学校耐震補強工事

鎌倉市

大規模改造

平成9年

山北高校耐震補強工事

神奈川県

大規模改造

 

鎌倉市消防本部庁舎耐震補強工事

鎌倉市

 

平成10年

相洋中・高等学校3、4、5号館耐震補強工事

明徳学園

 

平成12年

相洋中・高等学校8号館耐震対策工事

明徳学園

5階建ての内、上部2層を切除、軽量化

 

 

 

 

当社の実績からの内蔵型鉄骨耐震壁1枚当たり工事費は、490万円/枚〜650万円/枚くらい(税別)です。